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ー就労継続支援B型の支援計画を「一般」にしないための実践ガイドー

支援計画「一般」って何?B型での位置づけ

就労継続支援B型の支援計画は、事業所全体の「一般的な方針」と、利用者一人ひとりに合わせた「個別計画」の両輪で成り立ちます。ここでいう「一般」は、事業所としての提供体制や標準的な支援の枠組みを指しますが、そのまま写すだけでは個別最適になりません。日々の記録やアセスメントを土台に、一般方針を各人の強み・困りごとへ翻訳することが大切です。

法的枠組みと基本項目(目的・期間・アセスメント)

支援計画には、目的、期間、現状の把握(アセスメント)、支援内容、評価・見直し時期が入ります。B型では生産活動・その他の活動を通じた「働く力」の維持・向上が目的となるため、作業能力だけでなく生活リズム、体調管理、対人場面の安心感なども評価軸に含めます。

一般就労との違いと就労準備性の評価

B型は賃金型の雇用契約ではなく、工賃を得ながら働く訓練・社会参加の場です。一般就労の要件(出勤安定、指示理解、品質・速度)を直接当てるのではなく、準備性の段階(例:週3日→週4日、60分集中→90分など)に分解して評価します。

良い支援計画の作り方(一般的な流れ)

最初に事業所の一般方針を明文化し、次に個別アセスメントで「いま」の強みと困りごとを可視化します。そのうえで、一般方針の各要素を個別目標に落とし込み、記録様式とつなげます。最後に、見直しの頻度と基準を決め、誰が・いつ・どう振り返るかを共有します。

1. アセスメントの「見える化」

生活リズム、体調、通所時間、作業種別ごとの得手不得手、対人ストレスの引き金、支援が効いた場面を整理します。チェック表に加え、本人の言葉を引用して「納得のいく根拠」を残すと、目標設定が無理なくなります。

2. SMART目標例(B型ならでは)

具体的・測定可能・達成可能・関連性・期限のSMARTで定義します。例:朝礼への参加率を80%→90%へ(4週間)。軽作業Aでの不良率5%→3%へ(8週間)。週3日通所を維持し、午後の休憩を10分→5分で戻れるよう練習(6週間)。「一般」方針の言い換えにより、誰が見ても判定できる指標にします。

3. サービス提供記録とのつながり

日々の記録欄に目標項目の欄を設け、達成度(○・△・×)と根拠のメモをセットで残します。記録→週次ミーティング→月次振り返り→計画修正のサイクルを固定し、担当者間のばらつきを減らします。

具体例:障害特性別の計画テンプレート

同じ「一般」方針でも、特性により翻訳は変わります。テンプレートは骨組みだけを共通化し、観察指標と支援技法を個別に差し替えられる構造にすると便利です。事業所内で用語を統一し、誰が書いても同じ品質になるようにしましょう。

発達障害のある方の例

目標:作業手順の認知負荷を下げ、品質の安定を図る。
支援:手順カードとタイムタイマーを併用、声かけは短文・一文一義。刺激過多を避ける座席配置。
評価:手順書なし時の不良率→あり時の不良率、声かけ回数、遅延の回数。

精神疾患のある方の例

目標:通所の安定とセルフケアの確立。
支援:朝の体調チェック、緊張が高い日の作業難易度を調整、休憩の取り方のリハーサル。
評価:出席率、自己申告の不安スコア、休憩後の復帰時間、服薬遵守の確認。

身体障害・難病のある方の例

目標:疲労の波を踏まえた稼働時間の最適化。
支援:作業姿勢の工夫、道具の調整、短時間のインターバル。
評価:1日の稼働合計、痛みスケール、作業速度のばらつき。

モニタリングと修正のポイント

評価は「できた/できない」で終わらせず、要因を短く分解します。体調、環境、指示の出し方、作業の難易度のどこに原因があったかを仮説化し、次の週の支援に反映します。数値と本人の実感の両方を並べることが、納得感のある修正につながります。

週次・月次の確認方法

週次はミニ評価(指標のトレンド確認)、月次は計画本文の見直し。目標が達成済みなら次の段階へ、未達なら要因を一つだけ選んで介入を変えます。

家族・関係機関連携の工夫

家庭のリズムや医療との連携が成果を左右します。連絡票の様式を簡素化し、共有は「必要な時に必要な分だけ」を徹底します。

よくある失敗と回避策

「一般」方針を丸写しして個別性が消える、記録が量だけ多くて支援に結びつかない、といった課題はどの事業所でも起こりがちです。次の観点をチェックリスト化して、計画の質を底上げしましょう。

「一般化」しすぎ問題

回避策:本人の言葉・行動例・観察データを各項目に1つずつ入れる。代替案を最低1つ書く。

記録はあるが支援になっていない問題

回避策:記録欄に「次回の試行」を必ず書く。週次会議で試行→結果→修正のワンフレーズを共有し、計画本文に反映します。

2025.10.17