~就労継続支援B型、就労選択支援に携わる立場から思うこと~
昨日、11月2日の読売新聞夕刊を読んでいて、思わず目が止まりました。
「4人に1人 半年未満で離職」
大きな見出しとともに掲載されていたのは、障害のある方々の雇用についての記事です。

障害者雇用は、法定雇用率の引き上げなどによって、少しずつ広がってきています。
しかし、その一方で、せっかく就職しても長く働き続けられない方がいる。
記事では、就職した障害者の約4人に1人が、半年未満で離職しているという調査結果が紹介されていました。
この数字を見て、私はいろいろなことを考えさせられました。
というのも、私たちは長年にわたり、障害のある方々の就労や療育、就労支援に携わってきました。
就労継続支援B型フロンティア、就労選択支援フロンティア、放課後等デイサービスきっともっとみらいを運営しています。
日々、さまざまな障害のある方々と向き合い、ご本人の思いやご家族の願い、そして働くことの難しさや喜びに触れる機会があります。
だからこそ、今回の記事は、決して他人事とは思えませんでした。
「就職すること」と「働き続けること」、そして「自分らしく生きること」。
この三つは、似ているようで、それぞれ違うものだと思うのです。
今日は、長年この仕事に携わってきた一人として、感じたことを書いてみたいと思います。
■ せっかく就職できたのに、なぜ続かないのか
障害のある方にとって、一般企業への就職は、大きな目標の一つになることがあります。
「自分の力で働きたい」
「社会の役に立ちたい」
「お給料をもらって生活したい」
「家族を安心させたい」
そんな思いを持って、就職を目指す方々がいます。
私たちも、そうした一人ひとりの願いを大切にしながら、日々支援に取り組んでいます。
しかし、実際に働き始めると、さまざまな壁にぶつかることがあります。
仕事の内容が合わない。
職場の人間関係が難しい。
自分の気持ちをうまく伝えられない。
周囲が障害の特性を十分に理解してくれない。
こうしたことが重なると、せっかく就職できても、働くことがつらくなってしまう場合があります。
ただ、私はここで考えたいのです。
本当に、その人が仕事を続けられなかっただけなのでしょうか。
仕事の内容や職場の環境、周囲の理解や支援がもう少し違っていれば、働き続けられた方もいるのではないでしょうか。
もちろん、すべてを企業の責任にすることはできません。
しかし、本人の努力だけで解決できない問題も、確かにあると思います。
■ 私たちが現場で大切にしていること
私たちは、就労継続支援B型や就労選択支援などの事業を通じて、障害のある方々の「働く」ということに向き合っています。
その中で大切にしているのは、一人ひとりに合った働き方を考えることです。
障害の種類や程度だけで、その人の可能性が決まるわけではありません。
同じ障害があっても、得意なこと、苦手なこと、体力、生活環境、そして将来への希望は、一人ひとり違います。
一般企業で働くことを目指す方もいれば、まずは自分のペースで作業に取り組みたい方もいます。
生活のリズムを整えるところから始めたい方もいます。
そして、働くことを通じて、人とのつながりや社会参加の喜びを感じたい方もいます。
どれが正解で、どれが不正解ということではありません。
大切なのは、ご本人が何を望み、どのような環境であれば力を発揮できるのかを、一緒に考えていくことです。
就労選択支援も、そうした考え方につながる大切なサービスだと感じています。
本人の希望や適性、必要な支援を丁寧に整理し、その人に合った働き方を選択できるようにする。
私たち支援者の役割は、本人に代わって人生を決めることではありません。
その人が自分自身の可能性に気づき、自分らしい道を選べるように支えること。
長年この仕事に携わる中で、その大切さを強く感じています。
■ 「雇用率を達成したら終わり」ではない
今回の記事で、もう一つ気になったのは、障害者のキャリア形成についてです。
企業にとって、障害者雇用を進めることは大切な社会的責任です。
しかし、決められた人数を採用することだけが目的になってしまっては、本当の意味での雇用とはいえないのではないでしょうか。
「採用したから、それでよし」
「この仕事だけをしてもらえばいい」
そんな考え方になってしまうと、働く人の成長の機会が失われてしまうかもしれません。
新聞記事では、障害のある正社員のうち、昇進経験のない人が6割を超えるという調査結果も紹介されていました。
もちろん、すべての人が昇進を望んでいるわけではありません。
しかし、障害があるという理由だけで、挑戦する機会まで奪われることがあってはならないと思います。
仕事を覚え、できることが増え、自分の成長を実感する。
その積み重ねが、働く意欲につながるのではないでしょうか。
障害者雇用は、人数をそろえることではなく、人を育て、その可能性を広げること。
企業にも、そんな視点を大切にしていただきたいと思います。
■ 人は「必要とされている」と感じることで成長する
長年、障害のある方々と関わる中で、私が大切だと感じていることがあります。
それは、人は誰でも、自分の存在を認められ、必要とされることで、前を向く力が生まれるということです。
昨日までできなかったことが、今日は少しできるようになる。
初めて任された仕事を最後までやり遂げる。
誰かから「ありがとう」と声をかけてもらう。
そうした小さな経験が、自信につながっていくのだと思います。
これは障害の有無に関係ありません。
私たち支援者も、できないことばかりに目を向けるのではなく、その人が持っている力や可能性に目を向けなければなりません。
そして、その可能性を信じて関わり続けることが大切なのだと思います。
もちろん、簡単なことばかりではありません。
思うようにいかないこともあります。
時間がかかることもあります。
それでも、焦らず、比べず、一人ひとりの歩みに寄り添っていく。
私は、それが福祉の仕事の大切な部分だと思っています。
■ 企業だけでなく、私たち支援者にも役割がある
今回の新聞記事を読んで、企業側の課題だけでなく、私たち福祉事業者の役割についても改めて考えました。
就職が決まったら、それで支援は終わり。
決して、そうであってはならないと思います。
就職する前に、ご本人の希望や適性を丁寧に把握すること。
働き始めてからも、必要に応じて企業や関係機関と連携し、安心して働き続けられる環境づくりを支えること。
そして、もし離職することになったとしても、それを単なる失敗として捉えず、次の一歩につなげていくこと。
こうした視点が必要だと感じます。
また、就労継続支援B型にも、大切な役割があります。
一般企業への就職だけを唯一の目標とするのではなく、その人に合ったペースで働き、社会とつながり、充実した毎日を送ること。
そこにも、大きな意味があります。
「働く」という言葉の中には、実にさまざまな形があるのです。
企業と福祉が互いに理解を深め、それぞれの役割を果たしながら協力していく。
そんなつながりが、これからの障害者雇用にはますます必要になるのではないでしょうか。
■ 4人に1人という数字の向こう側に
「4人に1人が半年未満で離職」
この数字は、単なる統計ではありません。
その向こうには、一人ひとりの人生があります。
勇気を出して就職した人。
一生懸命に仕事を覚えようとした人。
職場になじめず悩んだ人。
そして、働き続けたかったのに、続けられなかった人もいるかもしれません。
もちろん、離職すること自体が悪いわけではありません。
自分に合った環境を求めて、新しい道を選ぶことも大切です。
ただ、働きたいという思いがあるのに、理解や支援が足りないことで、その願いがかなわなくなるとしたら、とても残念なことです。
私たちは長年、障害のある方々の雇用や療育、就労支援に携わってきました。
だからこそ、改めて思います。
人には、それぞれの可能性がある。
そして、その可能性は、周囲の理解や関わり方によって、大きく広がることがある。
障害があるからできないと決めつけるのではなく、どうすればできるのかを一緒に考える。
一人ひとりの小さな成長を喜び、その人らしい人生を応援する。
そんな社会であってほしいと願っています。
■ 最後に ~働くことの本当の意味~
私たちが目指しているのは、単に多くの方を就職させることではありません。
また、すべての方に同じ働き方を求めることでもありません。
一人ひとりが自分に合った場所で、自分の力を発揮し、働く喜びや生きがいを感じられること。
そこに、私たちの仕事の大きな意味があると思っています。
就職できたことがゴールではない。
長く働き続けることだけがゴールでもない。
大切なのは、その先にある、その人自身の幸せではないでしょうか。
今回の読売新聞の記事は、私たち自身の支援のあり方を見つめ直す機会にもなりました。
これからも、一人ひとりの声に耳を傾け、可能性を信じ、本人が望む人生を歩んでいけるよう、日々の支援を積み重ねていきたいと思います。
障害のある人も、ない人も。
誰もが自分らしく働き、必要とされ、明日に希望を持てる社会へ。
「働くこと」が、その人の人生を豊かにするものであってほしい。
そんな思いを、これからも大切にしていきたいと思います。
参考:2026年11月2日付 読売新聞夕刊「4人に1人 半年未満で離職」「働く障害者 育成に不安」
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